この記事は“ZYGEN NP-01”についてレビューしていく。
評価:4.0
発売前から期待されていた話題のゲーミングマウス「ZYGEN NP-01(以下、NP-01)」。
VAXEEのブランドコンセプト「eSports系の商品については情熱を持っているパートナーと協力し、彼らのブランドのための製品を開発していく」という意思を体現した初の製品。それが「ZYGEN NP-01 Powered By VAXEE」である。
元『Counter-Strike 1.6』のプロゲーマーで数多の伝説的な記録と、とんでもない名プレイを残した生ける伝説『noppo氏』とVAXEEがコラボレーションして誕生したnoppoブランド『ZYGEN/ジゲン/慈眼』初のゲーミングマウス『NP-01』についてレビューしていく。
スペック
形状 | ハーフエルゴノミック |
---|---|
DPI | 400/800/1600/3200Hz |
LOD公称値 | 1.0-1.8mm |
LOD実測値 | 1.1/1.4/1.8mm |
ボタン数 | 5つ(左側面に2つ) |
センサー | PixArt社製PMW3389 |
ケーブル長 | 約200cm |
ポーリングレート | 125,500,1000Hz |
クリック応答速度 | 2/4/8ms |
サイズ | L 120.0×W 66.0×H 39.0mm |
ソフトウェア | ドライバーレス |
外箱と内容物
内容物はマウス本体のみで非常にシンプル。取扱説明書や保証書等はない。
マウス本体
360°VIEW
「NP-01」を前後から見た第一印象は左右対称かつパーム部の高さも均一な「ZOWIE S2」らしさを感じる。両側面は左右非対称エルゴノミック形状。大きさはL 120.0×W 66.0×H 39.0mmのミドルサイズ。クリックは左右独立のセパレートタイプ。
表面
「NP-01」の表面は半光沢のクリアコーティング。クリックパーツはコーティングが施されておらず、光沢梨地。「ZYGEN NP-01の紹介」の動画内にて、表面の防滑性について言及されているが、クリックパーツは使用直後から手汗に関係なくグリップを感じ取れず滑る。半光沢のクリアコーティングの表面は、使用直後は特に滑ることはないが、時間経過で親指・薬指・小指のホールドポジションがじわじわとズレていく。

握り方にもよるが更なるグリップ力を求めるなら、グリップテープを貼るかコーティングを剥離させてマットにする必要があるだろう。
ZOWIE EC2と形状比較
「ZOWIE EC2」のような左右非対称エルゴノミック形状はシェルの背が高く、握り方が固定される形状と容易に想像できる。NP-01は確かに両側面はエルゴノミック形状でありながらパーム部の背が低く、左右対称マウスのように高さに偏りがない形状で、握り方を制限されない『ハーフエルゴノミック形状』が特徴的である。








ZOWIE S2と形状比較
「NP-01」は「ZOWIE S2」に非常に近似した形状であるため、親指・人差し指・中指の感覚はS2を握ったそれとほぼ一致。S2の左側面をほんの少しだけ凹ませて、右側面を膨らませた左右非対称形状。薬指・小指のポジションが見つけやすくS2よりもホールドが容易で扱いやすい。








裏面
「NP-01」はデフォルトで0.45mmのマウススケートを装着。「ZOWIE S2」のスケートに近似した形状だが、それと比べて一回り小さめ。純正オプションで0.6mm厚スケートの用意がある。両方とも安定性と耐久性を両立させたPTFE純度99.5%のマウススケート。
0.45mmは非常に薄いため、中間層が柔らかいマウスパッドではストッピングの際にNP-01のボトムシェルとマウスパッドが擦るため、操作性に悪影響を及ぼす可能性がある。

マウスパッドの中間層の硬さ、マウスを止める力加減、遊ぶゲームのジャンルなど様々な環境が各々違うので一概には言えないが、十全の準備をするならば0.6mm厚のマウススケートも合わせて用意しておくと良いだろう。スケートを変えたらLODの調整も忘れずに。
- 左:0.45mm 右:0.6mm
ボトムにあるボタンは左から下記3種のボタンが並ぶ。
- DPI調整(赤 400・紫 800・青 1600・緑 3200)
- ポーリングレート変更(125・500・1000Hz)
- クリック応答速度(2/4/8ms)
センサー
「NP-01」のセンサーはPixArt社製PMW3389センサーを搭載しているが、ドライバーレスで細かなDPI調整は不可能。DPIは400・800・1600・3200の四段階の中から選択することになる。リフトオフディスタンス(LOD)は3段階で設定可能。
シックネスゲージで測定した実測値は低1.1mm・中1.5mm・高1.8mmであった。
サイドボタン
サイドボタンはやや小ぶりながらシェル本体からしっかりと凸起。前後の位置は近すぎず遠すぎない適切な位置。クリック感は浅く短いストロークで遊びが無い。詳細はビルドクオリティの項目にて後述している。

スイッチ・クリック反応速度
ボトムシェルのクリック応答速度は2/4/8msの3つから選択できる。
応答速度2ms設定時にフリックなどの動作中「NP-01」とマウスパッドで衝撃した時に限りクリックの誤入力が発生しやすく、それを避けるため常に4msに設定していた。左右クリックにあたるマイクロスイッチはHUANO製60gスイッチを搭載。その他ホイール・サイドクリックのマイクロスイッチも同様にHUANO製。
他に類を見ない特殊なホイールスイッチ位置と入力方法。「ZOWIE EC2」などの他のマウスはホイールが左右どちらかに傾いて、軸でスイッチを押下する構造になっているが、「NP-01」は軸ではなく軸受けがまっすぐ降りてきて押下する構造になっている。
マウスホイールは、耐久性・信頼性が高い光学スクロールホイールを採用。ZOWIE製マウスの16ノッチよりも細分化された24ノッチ。ホイールの回転およびクリックに求められる力はやや重く長時間使用して疲れやすい。そして、ZOWIE製マウスに似たあの独特の感覚と大きな動作音。
分解結合
尾部マウススケート裏に隠されている△の特殊ネジ2本を緩解する必要がある。先頭側のスケートを剥がす必要はない。ボトムシェルとPCBの分離は小さなプラスネジを外せば非常に容易。トップシェルの中に詰まったアンコ抜きがやや難しい。
マイクロスイッチが載っているアンコとトップシェルとが噛み合っている凸凹が食い違いになっているので回転させるように力を加えれば分離できる。クリックパーツを裏側から見ると2番目と3番目の試作機で試された指を置く凹ガイドの名残が見える。抜いたアンコには左側面だけでなく右側面にもサイドスイッチをマウントできるスペースが確保されている。
重量
公表値は75グラム。ケーブル込みの実測値は80.2グラム。60グラム後半-80グラム前半が疲れにくさと扱いやすさが両立する重さなので、ちょうどよい。

握り心地
筆者の手のサイズ
かぶせ持ち
親指・人差し指・中指は「ZOWIE S2」譲りの握りやすさ。S2で感じていた薬指・小指の窮屈さがNP-01の『ハーフエルゴノミック形状』で改善された。何も小細工せず、あるがままにホールドできる万人向けの持ち方である。
親指の付根が最も強く密着する。背が低く偏りが無い形状であるためポジションの微調整も容易。親指とサイドボタンの位置関係は「ZOWIE S2」より広くなり窮屈に感じない。
- かぶせ俯瞰
- かぶせ側面
つかみ持ち
つかみ持ちが「NP-01」と最も合う持ち方。手のひらがシェルと強く密着し、かぶせ持ち同様両側面の形状がホールドしやすいポジションを提供している。人差し指・中指先端がマイクロスイッチの直上にくるため軽快かつ明瞭にクリックできる。高さに癖のない『ハーフエルゴノミック形状』で握る位置・角度が調整しやすくて、各々がしっかりホールドできるポジションを見つけやすい。
- つかみ俯瞰
- つかみ側面
つまみ持ち
パームの保持を失い指先だけで持つ形になるが、自然とフィットする位置を「NP-01」の形状は提供できている。つまみ持ちでは小指の付根が最も強くシェルと密着する。しかし前述したように、時間経過とともに防滑性が低下する半光沢クリアの表面コーティングと、コーティングがオミットされたクリックパーツだけでホールドし続けるのは難しく、グリップテープ等の工夫が必要。
- つまみ俯瞰
- つまみ側面
ビルドクオリティ
スイッチ・あそび
ホイールクリックを除いて、全てのボタンに共通してしっかりとしたクリック感。ストロークは短くてレスポンスが速い。左右クリックはどこを押しても同じクリック感で、差異が無い。チリも合っており各パーツのあそびがない。詳しくは動画を参照。
パラコード
「NP-01」のパラコードは「Endgame Gear XM1」の純正コードやサードパーティーの交換用パラコードのような柔軟性に富むものではないが、耐久性を重視した。被覆カバーを寄せることで緩解状態と緊張状態を調整できる仕様。
硬さはアルデンテのような細く芯が残る感触。ケーブルヘッドが上方へ向くように取り付けられており、マウスバンジーと併用すると垂れることなく宙に浮かせてホールドできるため、マウスパッドとパラコードが擦れることがない。
パラコードの径は「CAMADEⅡ」や「Mouse Bungee V2」などのマウスバンジーで保持できるが、若干窮屈さを感じる程度の太さである。
- 緩解状態
- 緊張状態
- パラコード径
- 宙に浮いて保持できる
センサー
「NP-01」はPixArt社製PMW3389センサーを搭載。本来のポテンシャルでは解像度50-16000まで発揮できるが、ドライバーレスで細かな設定はできず、プリセットの400/800/1600/3200Hzの中から切り替えて選択する。
LOD調整は実測値で1.1/1.4/1.8mmの三段階で調整可能。特定のボタンを同時入力しつつマウスをUSBをポートに接続することで変更できる。詳しくはこちら。
環境
- OS:Windows 10
- 接続モード:有線接続
- 使用ソフト:MouseTester ver 1.5.3
- マウスパッド:Xtrfy GP2
- ポーリングレート:1000Hz
結果
マウスとPC間での信号の同期に乱れはなく、波形は安定している。微細なノイズは特に確認できない。xSumグラフを見て頂ければ分かる通り、滑らかかつ精確なトラッキングが記録されている。センサーの性能に一切問題は無い。
本音のまとめ
評価:4.0
下記5点の不満点さえ改善されればおそらく、価格・性能・形状・品質・使い勝手の5拍子揃った、最も優れたゲーミングマウスとして確固たる地位を築けるだろう。
「ZYGEN NP-01」で体現した新たな「ハーフエルゴノミック形状」は、左右非対称マウスでありながら、握り方を強制されないユニークな形状なので、ZOWIE S2やLogicool G PRO WIRESS、Endgame Gear XM1などの左右対称マウスを普段使用している方でも違和感なくスムーズに移行できる。
オフライン体験会なども各地で開催されるようなので、もし触れる機会があればぜひ「ZYGEN NP-01」を手に合わせてみて検討していただきたい。
追記
NP-01をマットブラックに塗装して、0.6mmのスケートに履き替えて、グリップテープつけたらめちゃくちゃ快適になった。 pic.twitter.com/tBu0YVslJW
— MNG|MyNewGear (@MNG_blog) October 23, 2020